飛行機が遅延した場合、利用者はどう対応したらいいのでしょうか。また、どういう補償を受けられるのでしょうか。タクシー代やホテル代は出してもらえるのでしょうか。気になる方は多いでしょう。わかりやすくご案内しましょう。
基本は「遅れても着けば補償なし」
まず、飛行機の遅延時の対応の大原則を覚えておきましょう。それは、「遅れても着けば補償なし」です。
航空会社と旅客の契約は、「出発空港から到着空港までの旅客を運ぶこと」で終わりです。遅延に関して航空会社が責任を負うという規定はありません。すなわち、1時間遅れても1日遅れても、飛行機が目的地に着けば旅客と航空会社の契約は完了したことになります。
ですから、大原則として、遅れても目的地に着けば補償は発生しません。
実際に、飛行機が2~3時間遅れた場合でも、航空会社がなんらかの補償をすることは原則としてありません。
深夜遅延や宿泊発生時には補償があることも
とはいうものの、例外もあります。たとえば飛行機の到着が深夜になってしまった場合は、航空会社は旅客に対して何らかのフォローをしてくれます。たとえば、羽田空港到着が0時を回って終電がなくなってしまった場合、都心部までのバスをチャーターして出してくれることもあります。
しかし、タクシーチケットを出してくれたりすることは基本的にありません。タクシー代をもらえたという人はいるようですが、ケースバイケースで、航空会社がタクシー代を支出する事情があった場合に限られます。
出発が遅延して翌朝になってしまった場合でも、航空会社がホテルを用意したり、ホテル代を後から補償してくれることは、原則としてはありません。ただし、こちらもケースバイケースで、特段の事情があれば、航空会社がホテルを用意することもあるようです。
航空会社責任の場合は「補償あり」
「ケースバイケース」と書きましたが、実際にはある程度ルール化されています。たとえば、ANAの場合をみてみましょう。
ANAでは、航空会社の責任(機材故障など)により遅延した場合で、出発日が翌日以降への振替となった場合、ホテルの宿泊費をANAが支払います。また、出発空港と宿泊先間の移動に定期公共交通機関が利用できない場合には、タクシー代も負担してくれます。これらの上限は、合算で15,000円です。
また、ANAでは、搭乗便の遅延や振り替えによって到着空港への到着が深夜になった場合で、到着空港から旅客の目的地まで定期公共交通機関が利用できないときに、タクシーなどの交通費または宿泊費を支払います。この上限も15,000円です。
いずれの場合も、「航空会社責任の遅延」で、「翌日または深夜」になる場合に、航空会社が15,000円を限度に補償する、ということです。遅延して到着しても、市内への電車やバスが動いている時間では補償はありません。また、食事代に関する補償も原則としてはありません。
遅延が判明した時点で、飛行機をやめて新幹線などに乗って目的地に向かう場合は、航空券は無手数料で払い戻しになります。新幹線などの代金が航空券より高い場合は、差額をANAが負担してくれます。
上記はANAの例ですが、JALや中堅航空会社でも基準はほぼ同じです。
重ねて書きますが、こうした補償があるのは「航空会社責任の遅延」の場合のみです。
不可抗力の場合は補償なし
強風や大雪などの自然災害で遅延が発生した場合を「不可抗力による遅延」といいます。この場合、航空会社に責任はありませんので、補償は一切ありません。
たとえば、強風で飛行機が2時間遅延した場合、航空会社は形ばかりのお詫びをしてくれますが、金銭的な補償をしてくれることはありません。
ただ、利用者の立場から見ると、「本当に不可抗力なの?」と思うような場合もあります。たとえば、鳥に衝突した場合(バードストライク)は不可抗力とされますが、本当に鳥と衝突したかを利用者が確かめる術はありません。
天候が晴天で、他社が定時運航しているのに、自分の乗る便だけが遅延していると、「ホントに不可抗力か?」と疑う人もいるようです。しかし、その場合でも、補償がないことに変わりはありません。
国際線の場合
国際線の場合は、遅延時間によって、食事や飲み物を提供するのが一般的です。
航空会社により異なりますが、おおむね2時間以上~4時間未満の遅延の場合は1食、4時間以上の遅延の場合は2食の提供が目安となっています。
出発前の遅延の場合、ミールクーポンを渡されて、空港内のレストランで食事ができる形が多いです。
とくに海外では、黙っていてはもらえない場合もありますので、国際線の出発時に、遅延が2時間以上になりそうなら、空港カウンターで「ミールクーポンは出ないのか」と尋ねるといいでしょう。
旅客が機内にいて、なんらかの事情で大きな遅延が発生した場合は、機内で食事が提供されます。これも2時間程度の遅延が目安のようです。
LCCは一切補償なしが主流
格安航空会社LCCの場合は、不可抗力でも航空会社責任でも補償は一切しない、という会社がほとんどです。
ただし、ジェットスターは航空会社責任の場合は補償をする場合があります。ジェットスターの補償内容は、大手航空会社に近い水準です。
遅延時はどう対応したらいいの?
空港に着いて、飛行機が遅延しているとわかった場合、まず、遅延理由が「不可抗力」か「航空会社責任」かを見極めることが大切です。
悪天候などの不可抗力の場合の遅延は、補償はありませんから、あきらめて遅延便の出発を待ちましょう。
遅れて目的地に着いて、市街地への最終バスや最終電車が終わっていたら、中心部まで航空会社がバスを仕立ててくれるか確認し、なければさっさとタクシーの列にでも並ぶことです。
航空会社責任の遅延の場合で、深夜や翌日などの到着となり、なんらかの補償がありそうな場合は、空港でのアナウンスを注意深く聞いておきましょう。わからない場合は、航空会社のスタッフを捕まえて尋ねてもいいでしょう。
遅延の理由がなんであれ、出発前で、急いでいるときは、飛行機に乗るのはあきらめて、自分で代替交通機関を見つけるのもひとつの方法です。持っていた航空券は、翌日の一段落したときに連絡して払い戻してもらいます。
遅延の理由を問わず、遅延が発生した場合、出発前なら航空券を無手数料で払い戻すことができます。その場合、航空会社からの補償はありませんが、払い戻してもらい、他の航空会社や新幹線などに乗ることはできます。
ただし、LCCはこうした払い戻しはできません。LCCの飛行機が遅延で来ないからといって、自腹で新幹線のチケットを買ったとしても、LCCチケットの払い戻しは受けられない場合が多いです。
遅延情報はどこで確認すればいい?
飛行機の遅延情報は、当該航空会社のホームページの「運航情報」を見れば表示されています。利用航空会社のアプリをスマホにインストールしておくと、最新情報を得やすくなります。
遅延情報は、出発地、到着地の空港のホームページにも記載されている場合があります。羽田や伊丹など、主要空港のホームページは更新も早いので、確実性があります。
遅延はいつ発生するかわかりませんので、飛行機に乗る日は、空港に向かう前に運航情報をチェックしておくといいでしょう。